気付いたら太っていた。
気付いたら痩せていた。
それが意図していたものであれば良いのですが、無意識にそういった状況になっていた経験はありませんか?
これからお伝えすることを読めば、自分がどのくらいのエネルギーをどのように使っているのか、何となくイメージ出来るようになります。
基礎代謝、活動代謝、食事誘発性体熱産生と聞いてピンとこない方は是非読み進めてみて下さい。
あなたの体はこうして動いている
誰しもが体を動かす際にはエネルギーを消費します。
基礎代謝、という言葉をほとんどの方が聞かれたことがあると思いますが、その基礎代謝のように、体を意識して動かさずとも生きているだけでエネルギーは消費されてゆくものです。
他にも、そのエネルギーを摂り入れるための食事を行うことによっても、エネルギーは消費されます。
それらを全てまとめて、1日当たりのエネルギー消費量といいます。
消費カロリーと表現しても同じ意味で通じると思いますが、カロリーという言葉は本来単位を表すために使うものです。
例えば、体重の増減の事を増加キログラムと表現したら違和感を覚えるように、消費カロリーという言葉も正しい使い方ではありません。
ただ、世間ではかなり浸透している表現ですので、重箱の隅をつつくような意識は持たずに頭の片隅に留めておく程度にしておきましょう。
実際、当サイトでも伝わりやすさを重視して消費カロリーと表現している時もあります。
さて、1日当たりのエネルギー消費量ですが、これは
・基礎代謝
・活動代謝
・食事誘発性体熱産生
の3つからなり、成長期の子供に関してはこれらにプラスして成長に必要なエネルギーとして、
・エネルギー蓄積量
を含めます。
今回は身長が伸びきった人を対象に、基礎代謝と活動代謝と食事誘発性体熱産生について、掘り下げてお伝えしていきます。
基礎代謝
基礎代謝とは、わかりやすく言うと、横になっている状態でも自然と代謝されるエネルギーのことです。
運動や食事もせず、ただ生きているだけで代謝されるエネルギーです。
似たような言葉で安静時代謝というものがありますが、これは後述の食事誘発性体熱産生を含み、しかも座った状態の代謝であるので、基礎代謝よりも多くのエネルギーを必要とします。
ここまではご存知の方は多いと思いますが、それではこの基礎代謝が体のどの器官でどれくらい使われているか見てみましょう。
骨格筋 18%
肝臓 27%
脳 19%
心臓 7%
腎臓 10%
その他 19%
※出典 Exercise Physiology
なんと、骨格筋が18%しかありません。
骨格筋とは主に骨に付着していて、自分の意思で動かせる筋肉の事です。
筋肉の中でも、この骨格筋がトレーニングによって増やせる部分ですね。
上記の割合によると、基礎代謝が概ね1500キロカロリーだとして、270キロカロリー程度しか骨格筋による代謝は行われていないことになります。
つまり、筋トレを行って基礎代謝を上げ、太りにくい体をつくろう、といったような言葉をよく聞きますが、これは嘘ではないにしろ現実的には代謝への影響はいかがなものか、といったところです。
ダイエットを目標に代謝アップを狙うのであれば、後述の基礎代謝以外の部分でアプローチを行った方が現実的でしょう。
また、基礎代謝は環境によって上下するものです。
成人してから年齢が10年上がるごとに2%ずつ代謝が落ちていきますし、体組成が同じでも身長が高く体表面積が多い人のほうが代謝は高くなります。
その日の気温や体温でも上下するものなので、あまり神経質にならずに、骨格筋での代謝は思ったほど行われていないんだな、ぐらいの認識で良いでしょう。
活動代謝
活動代謝とは、基礎代謝とは別に、身体活動を伴うエネルギー消費のことです。
活動代謝を細かく分類すると、通勤や家事などを想定した生活代謝と、ジョギングやトレーニングなどを想定した運動代謝に分けられることもあります。
この活動代謝がなかなか馬鹿にできず、1500キロカロリーの基礎代謝の人がいたとすると、それに活動代謝をプラスして1950キロカロリーから3000キロカロリー程の消費エネルギーになります。
かなり幅があるのは、それだけ活動の量によって代謝量が左右されるという事ですね。
この活動代謝量をイメージするために一番簡単な方法は、メッツ(METs)を用いた計算を行う事でしょう。
このメッツとは運動強度の単位であり、安静時を1として、ある運動がその何倍のエネルギーを必要とするかを表したものです。
体重と運動のメッツが分かれば消費エネルギーを計算することが出来ます。
求め方は
1.05×(運動のメッツ-1)×運動時間/時×体重=消費カロリー
です。
主な運動毎のメッツは下記の国立健康・栄養研究所のデータを元にした簡易的な表で確認できます。
http://slim-slender.com/wp-content/uploads/2015/02/mets.pdf
もっと詳細に知りたい方はこちらが原本です。
http://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf
例えば、ジョギングのメッツが7ですので、体重50キログラムの方がジョギングを1時間行ったとすると
1.05×(7-1)×1時間×50=315キロカロリー
315キロカロリーのエネルギー消費になります。
この計算も覚えておくと良いのですが、よりお伝えしたいことは、1時間一生懸命走ったとしても315キロカロリー程度の消費にしかならないという事です。
315キロカロリーがどの程度かというと、ご飯茶碗に白米を軽く1.5杯、コンビニのおにぎりだと大体1.5個から2個といったところです。
毎日1時間ジョギングを行うのと、毎日おにぎり2個分の食事を控えるのと、どちらの方が楽かというと、多くの方々にとって食事のコントロールの方が楽だと思います。
もちろん、人それぞれですので中にはジョギングのほうが楽だという方もいるでしょう。
ただ、この消費エネルギーのイメージを知らずに、がむしゃらにジョギングでダイエットを行われている方は、もう少し楽なダイエットが行えるのではないでしょうか。
食事誘発性体熱産生
最後に、おそらく一番認知度の低い代謝がこの食事誘発性体熱産生です。
食事誘発性体熱産生とは、食べ物を摂取し、それが消化吸収から排泄代謝されるまでの過程で消費されるエネルギーの事です。
この食事誘発性体熱産生は摂取エネルギーのおよそ10%程度が消費されると言われています。
2000キロカロリーの食事を1日摂ったとすると、200キロカロリーはそれだけで消費されているという事ですね。
この代謝の面白いところが、栄養素によって代謝の度合いが異なるということです。
日本においてはアルコールを除いてカロリーの存在する三大栄養素は、摂取エネルギーに対して下記の割合で代謝が起きると言われています。
タンパク質 30%
脂質 6%
糖質 4%
タンパク質のみかなり高いことがわかりますね。
糖質の摂取を減らす低糖質食事法は、この食事誘発性熱産生によるダイエット効果が高いのではないかと言われているほどです。
つまり、鶏のささみや胸肉等の、そのほとんどがタンパク質で構成されているような食べ物は、摂取エネルギーの30%は代謝されるという事です。
先程の2000キロカロリーで例えると600キロカロリーです。
なかなか見過ごせない数字になってきましたね。
実際は、タンパク質のみで構成されている食べ物は無いので、食事誘発性熱産生の割合が20%を超えることはあっても、30%までいくことはほとんどないでしょう。
普段のお食事が炭水化物や甘いものばかりであふれている方は、この食事誘発性熱産生を意識して、お肉やお魚、卵などを食べてみてはいかがでしょうか。
ダイエットを行う上では、ある程度基本的な知識を身につけておくことも大事です。
特にあまりお金をかけずにダイエットを成功させたい方は、ここでお伝えしていることはもちろん、より広く細かい知識を身につけておくと効率の良いダイエットが出来るでしょう。
その労力と時間に価値を感じる方は、専門家の指導を受けることが最大の近道です。